ケイオスリングス2の感想 – 演出が上手い正統進化作

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Vitaの単体版が配信開始になったということで、今度はVita用RPG「ケイオスリングス2」の感想など。スマホで配信されているケイオスリングスシリーズの3作目を移植したもので、初代・Ωの前2作から一新された舞台で、究極の選択を迫られる重いストーリーが繰り広げられます。Ω同様、「ケイオスリングス3 プリクエル・トリロジー」のセットとして収録されていたのでプレイしてみました。

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ストーリーは初代・Ωとは違う世界になっており、前作未プレイでも問題なく楽しめるようになっています。もちろんケイオスリングスシリーズらしいシリアスな展開は健在。圧倒的な力に支配された密室で、主人公自身が誰を生贄にするか決定し、それを実行することで展開が変化していくという選択を迫られるものとなっています。その重さを演出するいい意味で後味の悪い演出はなかなかのインパクトです。

今作はストーリーが分岐するスタイルになっていて、初代やΩのような短編というよりも、1本の話として長く遊べるような作りになっています。分岐による変化があまり大きくないのは残念といえば残念でした。ボイスがΩよりだいぶ少ないのも微妙です。後半は和製RPGらしい展開もあり、さらにサブクエストややりこみ要素として遊べる依頼なども入っていて、スマホ向けに作られたゲームながらも結構なボリューム感です。

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戦闘システムはソロとペアを使い分け、3すくみの関係にある属性と有利不利の状態を奪い合うという基本は前作までと似ていますが、細かい部分はかなり進化しています。前作まではとりあえず無属性をキープしてチクチク戦うのが安定していましたが、今回はほとんどの場合で初期属性が付加される上、相手の属性を強制変更する技が大幅に増え、より属性コントロールが重要になりました。

大きく変わったのは有利ターンの奪い合いで、前作では戦闘開始直後以外はどちらかが大幅に有利な状態になっていましたが、今作ではゲージが一定方向に振り切れると1ターンだけ有利ターンを得られるというマイルドな調整になりました。

前作で「ジーン」と呼ばれていた、装備することで特殊能力が得られる「ソピア」の育成も大きく変わりました。FF7のマテリアのように装備して戦闘することで成長し、特殊能力が増えていくというシステムになっています。前作のような手軽すぎる汎用性の高いソピアは少なく、それなりに育成する必要もあるため、セッティングが重要になってきます。多少面倒くさくはなったものの、ストーリーの長さに見合ったシステムになりました。

ゲームバランスは前作のようにプレイヤー側が極端に有利になる局面が減っていて、良くも悪くも家庭用RPGっぽい無難なバランスになったように思えました。妥当ではあるのですが爽快感は落ちた印象です。難易度自体は前2作より高めで、特にボスはHPが高く、こちらの属性も見ながらきっちり弱点を突いてくるので結構な歯応えです。雑魚戦も弱点を突いて一撃必殺というのが無くなり、物理耐性やソロ攻撃耐性などのバリエーションが増えて一筋縄ではいきません。前作までの高速レベル上げなども通用しません。プレイヤー側の戦力が充実してできることが増えてくるとだいぶ楽にはなってはくるのですが。

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グ ラフィックは前作から大幅に向上しています。高解像度の一枚絵で描かれた背景やクオリティの上がったテクスチャで、初代やΩのようなギザギザ感はかなり改善されましたし、動きもだいぶ滑らかになっています。初代が出てきたときのようなインパクトはないものの、当時はスマホのスペックの向上を強く実感できたことでしょう。もっとも今となってはどうということもないのですが、2012年のスマホという時代背景込みで味わうべきでしょうね。

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気になったのがメニューなどインタフェースの操作感が非常に悪いことです。レスポンスが非常に悪いですし、見えているのにボタン操作ができない部分もありました。しかもカーソルを一番上から一番下へループさせるのもボタンに対応していなかったりしますし、前作と不必要にボタンが変更されている部分もありました。オリジナルのスマホ版がどうだったのかは分かりませんが、前作でそこそこできていた部分も退化しており、さすがにこれは残念です。

前2作はスマホ用ということでシステムやボリュームがシンプルな作りでしたが、今作は家庭用に迫るような重厚な作りで、想像以上に遊び応えがありました。配信当時にアップデートで追加されたやりこみ要素もあり、その気になればかなりのプレイ時間になりそうです。ケイオスリングスらしさを残しつつも、正統進化を遂げてより本格的なRPGになったと言えるでしょう。今Vitaで遊ぶにはキツい部分もありますが、その辺りを差し引けば十分楽しめました。