ケイオスリングス3の感想 – 新旧和製RPGのごった煮

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1、Ω、2に続いてVita用RPG「ケイオスリングス3」の感想など。スマホ向けに展開されていたケイオスリングスシリーズの4作目です。追加課金無しの買い切りのRPGながら、基本無料ゲームの要素が多く取り入れられているのが特徴。スマホ版とVita版が同時発売という珍しい形が取られましたが、このVita版はスマホからの移植っぽいですね。

Vitaの「プリクエル・トリロジー」版は旧作の1、Ω、2もセットになっていて、この際全部まとめてプレイしてやろうと購入しました。基本無料風の雰囲気には不安しかありませんでしたが、やってみたら想像していたよりもかなり面白かったです。しかも4本入りなのに安いというお得感がナイス。繰り返しになりますが追加の課金要素はありません。

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従来のケイオスリングスシリーズといえば暗いゲームというイメージだったのが、この3では一転してかなり明るい今時の和製RPGっぽい雰囲気になりました。ですが旧作とのつながり、キャラの行動原理、重いストーリー、壮大な設定などはケイオスリングスの良さを引き継いでいます。

ストーリーは常に目的がしっかりしており、人間味あふれるキャラによる冒険活劇の魅力がたっぷりでした。重いのにさわやか。特に要所で入る食事イベントが重い雰囲気を和らげると同時に、キャラの魅力を引き出していました。ストーリーのテーマにもピッタリです。…グランディアっぽいですけど。それと、主人公が強くなっていくストーリーと、成長システムが説得力のある形で連動しているのが好印象です。

ストーリーなどはクエスト形式で進行します。メインも面白いのですが、大量に入っている小規模なサブクエストをちまちまと潰していくのがテンポが良くて楽しいです。難易度やエンカウント率も自分好みに調節でき、スタミナなどの縛りもありません。マイペースに時間を忘れて没頭できました。スマホでもVitaでもちょっとずつ遊ぶことができる、今時のゲームの良さですね。

地味にBGMが良く、ゲームを盛り上げてくれます。今時のゲームらしく厚みのある音なのに、昔のゲームのようにメロディーの存在感が強くて印象に残ります。街、戦闘、イベントに至るまで1周しただけでもこれだけ響いたゲームは久しぶりでした。

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イラストが並びレアリティが表示されているメインメニューからはスマホっぽさが漂います。実際はキャラに「ジーン」という英雄の魂的なものを1つ装備させるシステムで、そのジーンのイラストが表示されています。ジーンは強化・合成することでパラメータの強化や特殊能力の修得ができます。イメージとしてはペルソナシリーズに近いです。

シリーズ伝統のジーンというシステムをスマホゲーの雰囲気と上手いこと融合させたという印象です。強くなるためにはジーンを多く育てて合成し、レアリティを上げてパラメータやレベルの上限を上げつつ、良い特殊能力を継承させることが重要になります。システムが取っ付きにくく、育成バランスはキツめではありますが、かなり遊び応えがあります。

残念なのはジーンを1キャラあたり1つしか装備できないことですね。パラメータの大半はジーンで決まるため、1つのジーンの影響力が大きすぎます。おかげで戦力ダウンを考えると合成も気軽にできませんし、育成のための付け替えもためらいます。旧作では複数装備できたのに、この窮屈さが勿体無いです。

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戦闘システムはシリーズならではの独特な要素を残しつつ、オーソドックスな雰囲気にリニューアルされました。有利不利を現す「ブレイクゲージ」、弱点属性を突いて崩した敵に追撃を加える「キメアタック」、同じ魔法を複数人で使うと発生する「連携」などのシステムが入っています。

数々の要素が入っていながらも戦闘のテンポは非常に良いです。上手く弱点を突いて攻撃を出していけば爽快感のある演出と共に次々と大ダメージを与えることができ、非常に気持ちがいいです。スピード感だけでなく間の取り方が絶妙。この辺りはスマホゲーのノウハウが生きているんでしょうね。

一方、適当に殴っているだけではなかなかダメージが伸びず確実に苦戦します。そもそも敵が強い上に育成の取っ付きにくさもあって、難易度はシリーズでも最高クラスと言えます。序盤からダメージが通らない感触なのに終盤以降は本当に敵が強く、手持ちの戦力じゃクリア後要素なんてとても無理です…。

トロフィーの取得率を見てもクリアまでたどり着いたプレイヤーは少なめなので、バランスはもうちょっと緩くても良かったんじゃないかと思います。面白いんだけれども正直辛すぎます。

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スマホの性能向上に伴って、グラフィックが大幅に強化されました。ダンジョンの背景は3D化され、カメラをグルグル回転させることも可能です。スマホのRPGでこれだけできる時代なんですね。Vita版だとむしろ画質が落ちているぐらいだとか。キャラのモデルの出来もかなり良いです。

3D化されてものすごく迷いやすくはなりました。その分ガイド機能が充実しており、普通に攻略する分には問題ないぐらいの親切設計がされています。マップや目的地方向の表示をはじめ、かつて同じメディアビジョンが開発したワイルドアームズシリーズのように、落ちているジェムを拾っていくと順路を辿れるような工夫もあります。

ワイルドアームズっぽい要素は他にも多く入っていました。バクダンやダーツといったグッズを使ってダンジョン内の道を切り開いていくのが特にそれっぽい部分ですね。快適なエンカウント率操作も搭載されています。さすがに「ッ!」はありませんがテキストのセンスもどこかワイルドアームズ。バトルモードの実況解説付きバトルや武器ごとに設定されたヒット数なども後期作品です。全体的には5thあたりの雰囲気がありました。

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本編のシナリオモードとは別に、同じセーブデータで遊べる「バトルモード」というもう一つのモードが搭載されています。このいかにも「スマホ!!」って感じのゴチャゴチャした構成。ステージで区切られた3戦程度の戦闘を繰り返していくというスタイルのゲームです。本編のレベル上げを兼ねて短時間でサクサク遊べて、しかもレアアイテムも色々得られるのが売り。

基本的にはMPがスマホゲーでいうスタミナ的な存在になっており、擬似課金通貨を使うと回復できるというシステムです。日替わり、月替わりでイベントが変化していくシステムも入っていてとてもスマホゲー風。本当はこれで基本無料にするつもりだったんでしょうね。

基本無料なら日替わりのシステムが毎日違った気分で楽しめるのでしょう。ですが、買いきりのこのゲームだと逆に思うように遊べないというのが残念でした。ログイン回数が増えたところで運営が儲かるわけでもないのに、日付に無意味に縛られるのはちょっと余計です。バランスも良いとは言い難いですね。おまけと考えればまあまあですかね。

スマホからの移植ということで、Vitaに最適化されていない部分が多いのは残念でした。状況によっては、頻繁に動作が重くなったり不安定になってしまうのが一番の問題です。重いダンジョンだとすぐに音声がおかしくなり、再起動を余儀なくされることもあります。かなり頻繁にオートセーブされるので大きな被害にならないのが救いでしたが、かなりのストレスでした。

インタフェースもタッチ操作を前提とした作りになっており、ボタン操作への対応が不十分です。特に今時カメラ操作のリバース設定すらできないのには参りました。メニューもタッチ前提のゴチャゴチャしたデザインで、カーソルの色が見づらいです。操作も統一されておらず、しかもボタンガイドが無いので常に手探り状態でした。Vita版を同時発売するならこの辺りまでこだわって欲しかったですね。

それにしても、これだけ面白いのにまるで人気がないというのが非常に寂しいです。コンシューマーユーザーから見たらスマホゲーっぽい見た目だけで敬遠され、スマホゲーユーザーから見たら値段が高い、面倒くさそうと敬遠されてしまったんじゃないかと心配してしまいます。

ケイオスリングスの良さを継承しつつも、従来型の和製RPGの要素をあれこれ盛り込み、基本無料のスマホゲーの要素さえも盛り込んだ、まさにごった煮のRPGでした。詰め込みすぎたせいか完成度がやや低い部分があるものの、RPGとしての面白さはそれを十分に補っています。あとは続編を前提とした終わり方をしているので、ちゃんと続編を出してくれることを願うばかりです。値段も安いことですし、RPG好きにはぜひ一度体験してもらいたい一本です。